メロスは激怒した。
王のあまりの暴虐ぶりに激怒した。
目を剥き、唾を飛ばして激怒した。
自分を処刑するという王の言葉を無視して激怒した。
セリヌンティウスを身代わりにしてまでも激怒した。
妹の結婚式などそっちのけで激怒した。
氾濫する大河に負けない勢いで激怒した。
盗賊すらも恐れおののくほどに激怒した。
怒り疲れて眠りながら、夢の中でまでも激怒した。
何度も諦めそうになりながら激怒した。
三日三晩、一歩も動かず激怒した。
セリヌンティウスが恨み言を吐く傍らでも激怒した。
王の勝ち誇った笑みとは対照的に激怒した。
太宰が泣きながら諌めても激怒した。
メロスはとにかく激怒した。誰もメロスの怒りを止められない。
しかし、メロスの怒りはさらに激しさを増すばかりだった。
国王の警告の言葉は、彼にとっては嘘以外の何物でもなかったのだ。
メロスは逮捕され、拷問を受けた後でも激怒していた。
命を失った後も激怒した
彼は命を失い、土に埋もれてしまった後でも激怒した。
彼は記憶を失った後でも激怒した。
彼の体がカリカリに焼かれた後でも激怒した。
彼は全身を失った後でも激怒した。
彼は心を失った後でさえ激怒した。
彼は心を失って死んでしまった後でも激怒した。
彼は心を失って土に埋もれた後でも激怒した。
彼は全身を失い、土に埋もれた後でも激怒した。
彼は記憶を失い、心を失い、死んでしまった後でも激怒した。
彼は持っていたすべてのものを失った後でも激怒していた。
彼は信じられないほど激怒していた。
彼は狂人だった。
王が持っていた魔法を全て使って殺さなければならないほどの狂人だった