小高い丘の上に一軒の洋館があった。赤い屋根のその屋敷には年老いた夫婦と幼い少女が暮らしていた。丘の半分を覆う広い庭には様々な種類の薔薇が植えられており、玄関まで続く道の途中には薔薇が巻きついた大きなアーチがあった。
“ああ、帰ってきたのか”
すでに顔が青ざめていた老夫婦が、心配そうな表情で私を見ていた。
“ついさっきまでここにいたんじゃないの?村に戻ってきたと聞いていたけど、誰かに会いに村に行ったのかと思っていたよ」。
“えっ、おじいさん、お母さんどうしたの?”
“自分の子供に会いに行くことは許されなかったんだ”
老人はドアの方を見つめた。
“彼らは村というところにいる。私は、あなたが街にいるとしか聞いていません。私も一緒に行きたいのですが、あなたがダメだと言うのなら、私一人でできると思います」。
“ああ、わかった。”
私はその少女の姿に驚きすぎていたようだ。
“では、私が会いに行きます。おじいさんのお世話をしてからでもいいですよ。終わったら、すぐにここに戻ってきてください」。
夫は首を横に振った。
“いや、僕はここに残るよ”
“はぁ?”
“おじいさんが言いたいことがあるそうだ。私も一緒に行きます。”
彼女は家の中に入り、私は洋館に戻った。
窓は開いていた。洋館の窓からは海が見えていた。