ニコは不思議に思っていた。

ニコは不思議に思っていた。
バーテルス伯爵家という名家の息子であるフェルディナンドが、平民で、しかも孤児である自分といつも親しくしてくれるのかを。
燃えるような赤い髪に濃い碧の瞳をしたフェルディナンドは、少したれ目なところが色っぽいと令嬢方に評判の色男である。武門を誉れとするバーテルス伯爵家の子息なだけのことはあり、フェルディナントも学生の頃からずっと騎士を目指して鍛錬に励んでいた。
 おかげで顔だけでなく、その体つきまでが美しい。鍛え抜かれた逞しいフェルディナンドの肉体は、美丈夫という言葉がまさに相応しいとニコはいつも思っていた。
 そんなフェルディナンドは当然ながら女性にモテる。人当たりが良く、誰にでも優しい彼は、昔からいつも貴族の令嬢たちに囲まれていて、彼の周囲はいつも華やかだった。
 だからと言って男から嫌われているかというと、実はそうでもない。フェルディナンドには男友達もたくさんいた。
 話術が得意で話をするとなかなか面白いし、なにより彼が家門に胡坐をかくことなく騎士を目指して人一倍鍛錬に励むその真摯な姿は、男心をがしっと鷲掴みするに値するカッコよさがあったからだ。
 要するにフェルディナンドは男女問わず、誰からも好かれる人間なのである。
 だからこそニコには分からない。
 多くの友人知人がいる中で、なぜフェルディナンドは誰よりもニコを特別扱いし、親密に接してくれるのか。いつでも一番近くにおこうとしてくれるのか、それがニコにはさっぱり分からなかったのである。

ニコが伯爵ほど魅力的な女性に出会うことは滅多にないが、伯爵自身は常に自分と似たような女性に囲まれていたので、女性の外見の違いを見分けることができた。
また、伯爵が亡くなってからのニコは、自分と同じように美しい女性を見たことがなかったので、どんな女性と付き合うべきかを考えていました。
しかし、伯爵ほどの美人は見たことがなかった。
ニコは美を愛する男だった。
強くて、美しくて、容姿端麗な女性が彼の理想のタイプだ。
ニコがそのようなビジョンを持って見たことのある女性は、この世界では貴族かその貴族の家系の女性しかいなかった。
したがって、伯爵の娘であるベルン伯爵令嬢が美人と呼ばれ、伯爵の孫娘であるヴィレッタ伯爵令嬢がバイルと呼ばれても不思議ではなかった。
ニコは伯爵を美しいと思っていたが、それは間違いなく伯爵夫人のおかげだった

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