どうやら俺は生まれ変わったらしい。

 どうやら俺は生まれ変わったらしい。
 その事実が、ようやく飲み込めた。

 俺は赤ん坊だった。
 抱き上げられて、頭を支えてもらい自分の体が視界にはいることで、ようやくそれを確認した。
 どうして前世の記憶が残っているのかわからないが、残っていて困る事もない。
 記憶を残しての生まれ変わり。
 誰もが一度はそういう妄想をする。
 まさか、その妄想が現実になるとは思わなかったが……。

 目が覚めてから最初に見た男女が、俺の両親であるらしい。
 年齢は二十代前半といった所だろうか。
 前世の俺よりも明らかに年下だ。
 34歳の俺から見れば、若造といってもいい。
 そんな歳で子供を作るとは、まったく妬ましい。

 最初から気付いてはいたが、どうやらここは日本ではないらしい。
 言語も違うし、両親の顔立ちも日本人ではない、服装もなんだか民族衣装っぽい。

 家電製品らしきものも見当たらない(メイド服きた人が雑巾で掃除してた)し、食器や家具なんかも粗末な木製だ。先進国でないだろう。
 明かりも電球ではなく、ロウソクやカンテラを中心に使っている。
 もっとも、彼らが特別に貧乏で電気代も払えないという可能性もある。

 ……もしかして、その可能性は高いのか?
 メイドっぽい人がいるから、てっきりそれなりに金があるのかと思ったが、
 彼女が、父か母の姉妹と考えれば、なにもおかしい事はない。家の掃除ぐらいするだろう。

 確かにやり直したいとは思ったが、電気代も支払えないほど貧乏な家に生まれるとは……。

 でも、ただで美女の母乳を吸えるのは最高だ。
 体が成長していないせいか、
 それとも相手が母親であるせいか、
 まったく興奮はしなかったが……。

 
 半年の月日が流れた。

 半年も両親の会話を聞いていると、言語もそれなりに理解できるようになってきた。
 英語の成績はあまりよくなかったのだが、やはり自国語に埋もれていると習得が遅れるというのは本当らしい。
 それとも、この身体の頭の出来がいいのだろうか。
 まだ年齢が若いせいか、物覚えが異常にいい気がする。

 この頃になると、俺もハイハイぐらいは出来るようになった。
 移動できるというのは素晴らしい事だ。
 身体が動くという事にこれほど感謝したことはない。

私は幼くて言葉が理解できませんでしたが、両親がこのことを喜んでいないことは理解できました。
 
 
 
 私はまだ両親の胎内にいました。  
   
 生まれた時は何も感じなかった。  
   
 生まれた時は何も感じなかったし、どうしたらいいのかわからなかった。  
   
 私には両親の記憶も、それ以前の親戚の記憶もありません。  
   
 前世の友達の記憶もない。
 
 
 
 自分が生まれてきた世界の記憶もない。
 
 
 
 自分が何歳なのか、知る術がない。  
   
 幼少期の記憶は、両親と弟の記憶以外は全くない。  
   
 現実」という言葉の意味が理解できなかった。  
   
 悪い」とか「良い」という概念が理解できなかった。
 
 
 
 前世では、自分が一番悪かった。  
   
 理由はわからなかったけど、諦めたかった

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