山路を登りながら、こう考えた。

山路を登りながら、こう考えた。
 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通とおせば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟さとった時、詩が生れて、画が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

私は、気まぐれな人たちのようにはならないと決めていましたが、自分がすでに彼らのようになっていることに気がつきませんでした。
ろくでなしの国に移住したとしても、彼らのようなろくでなしにはならないだろう。それは、自分には復讐する力があり、友人を殺したろくでなしを殺すことができると気づいたからです。
 
そんなことを考えながら、私は山道の風景を眺めていました。
木々は高いものの、ほとんどが茶色く枯れていました。
私は、山の中を通る山道にいました。
私は山を貫くような道を歩いていました。
私は山を貫く道にいた。
そんなことを考えながら、私は山道の風景を眺めていました。
古い道なのに、人の足音が響いている。
古い道とはいえ、人の足音が響いていた。
それが古い道であっても、それはまだ人々の足音で満たされていました。
私は一人でその道に立っていた

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