この話の主人公は忍野半三郎と言う男である。

この話の主人公は忍野半三郎と言う男である。生憎大した男ではない。北京の三菱に勤めている三十前後の会社員である。半三郎は商科大学を卒業した後、二月目に北京へ来ることになった。同僚や上役の評判は格別善いと言うほどではない。しかしまた悪いと言うほどでもない。まず平々凡々たることは半三郎の風采の通りである。もう一つ次手につけ加えれば、半三郎の家庭生活の通りである。
 半三郎は二年前にある令嬢と結婚した。令嬢の名前は常子である。これも生憎恋愛結婚ではない。ある親戚の老人夫婦に仲人を頼んだ媒妁結婚である。常子は美人と言うほどではない。もっともまた醜婦と言うほどでもない。ただまるまる肥った頬にいつも微笑を浮かべている。奉天から北京へ来る途中、寝台車の南京虫に螫された時のほかはいつも微笑を浮かべている。しかももう今は南京虫に二度と螫される心配はない。それは××胡同の社宅の居間に蝙蝠印の除虫菊が二缶、ちゃんと具えつけてあるからである。
 わたしは半三郎の家庭生活は平々凡々を極めていると言った。実際その通りに違いない。彼はただ常子と一しょに飯を食ったり、蓄音機をかけたり、活動写真を見に行ったり、――あらゆる北京中の会社員と変りのない生活を営んでいる。しかし彼等の生活も運命の支配に漏れる訣には行かない。運命はある真昼の午後、この平々凡々たる家庭生活の単調を一撃のもとにうち砕いた。三菱会社員忍野半三郎は脳溢血のために頓死したのである。

半三郎と常子が結婚したとき、二人の間には娘がいた。その名は「つばさ」。翼の結婚式の時、母親は「翼は道に迷った女の子のようだ」と言いました。半三郎夫妻が結婚したとき、翼には良晴という弟がいました。
常子と義治は特に仲が良かったわけではない。半三郎の結婚1年目には、2、3回しか会っていない。しかし、結婚2年目、半三郎が中国に行っている間に、常子は母親と喧嘩をしてしまった。けんかの発端は、日が暮れた後の公園を一緒に散歩したことだった。
 
 
 
 ある日、半三郎と常子の老夫婦が公園の道を歩いていた。そこに一人の若い女性が現れた。彼女は二人より年上だが、まだ若い女性のように見えた。彼女は常子の母親と名乗っており、とても心の優しい良い人でした。彼女は、半三郎が靴下を買うために少しばかりのお金を渡してくれた。半三郎は、これはとても寛大なことだと思い、目でお礼を言った

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