その部屋は小さな窓から僅かな光が差し込んでいた。
その僅かな光でぼんやりとそこにいることがわかる。
あまりにも無防備なようだが、踏み込むのは躊躇われるほどの気配。
これが魔王と呼ばれる存在なのか。「よくここまで辿り着いたものだ」
それは不意に言葉を発した。
「もう何年も言葉を発していなかった。少し話をしないか?いや、お前は聞くだけでいい。」
それは唐突な申し出だった。
「まあ、そう身構えるな。私を討ちに来たのだろう。ここにいるのももう飽きた。話を聞いたなら好きにすればいい」
何とも拍子抜けな提案であろう。
話を聞けば、命を差し出すというのか。
労せずにいただけるなら、その方がよいか。
半信半疑ながら、身構えたまま了承する。「さすがに剣は納めぬか。まあ、よい。」
そう言うと、それは話を始めた。
“お願い “があります。
“人を殺すこと。私の話を聞いてくれれば、その願いを叶えてあげよう」。
私は大きく息を吸った。
“あなたの願いを受け入れます”
“そして、なぜ私にあなたを魔王にする力を持たせるのですか?
私はあなたが私よりも力を持っていると信じていますが、なぜ私にその力を与えようと考えるのですか?
私は魔王である。あなたは私の親族を殺した魔王です。
私はオルソングランデの街を破壊した魔王だ。
お前は本当の魔王を殺していない。
それなのに、なぜお前が魔王になることを許すのか。私は魔王になりたいとは思いません。
本気でそう思っているのなら、今すぐにでも戦いを始めよう」。
部屋の向こう側から声がした。
それは、魔王の声だった。
“これが魔王の正体だ。
“これこそが、私が魔王になり、親族を殺し、世界を滅ぼすために必要な力であった。
“この力を手に入れた今、ただの人間であるお前に、この力を奪わせるわけにはいかない。
“私はあなたにこの力を与えることができますが、あなたが破壊しなければなりません。