国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ呼ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん」
明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。

少女は島村に振り返り、深々とお辞儀をした。
“祖父江さん、お世話になりました。子供たちにはあまり厳しくしないでくださいね」。
“あ、いえ、手加減はしませんよ。しかし、彼らが行儀よくしていれば、すぐに覚えてくれるでしょう」。
暗い車内では、小さなストーブの火がパチパチと音を立てているだけだった。少女は島村からガラス窓を受け取り、ポケットに戻した。
“きれいな声ですね。”
島村は微笑んだ。
しばらくして、二人の足は止まった。子供の一人が外からドアを開けた。少女は白い寝間着を着て出てきた。
“「あら、みんな来てくれたのね。子供たちはもう待っているから、居間で待っていてね。私がご案内します」。
“ああ、大丈夫ですよ。お世話になりました」。
女の子は頭を下げて島村にお礼を言った。少年は居間のドアを開けてから、天井を見上げた。
“疲れた。あまり時間がなかったけど、それでも待たなければならなかったんだよ。本当にごめんね。”
“わかっています

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