キクはハシがいじめられたりすると必ず助けた。ハシは体が弱いせいかキク以外の他人と接触するのを嫌った。特に大人の男を恐れていた。ハシの体には涙がいっぱい詰まっているのだとキクは思った。パンを乳児院に届けに来る男が、お前はいつも軟膏臭いなあ、と言って肩を軽く叩いただけで、ハシは泣き出した。キクはこういう時言葉をかけてやるわけではない。ただ黙って傍にいるだけだ。ハシが大きな声で泣いたり怯えて震えたり叱られていないのに謝ったりするとき、キクは表情を変えずにいつまでもハシの回復を待った。だからハシは後を追って便所にもついていこうとしたが、キクは拒まなかった。キクにもハシが必要だったのだ。キクとハシは肉体と病気の関係だった。肉体は解決不可能な危機に見舞われた時病気の中に辞退する。
“私も行く” (キク)
“いや、そのチャンスを逃してはいけない。前に何度言ってもダメでした。” (橋)
“まあ、連れてきてくれとは言ってないので、今回は別人でいいかと”(橋) (キク)
“そういうことなんです。何かあったら病院で聞いてください。私は気にしません。” (橋)
HASHIは、他人のことを考えない人でした。とてもやさしくて、相手を人と見なさない人だった。キクは何と言ったらいいのかわからなかった。
「そういうわけで、わたしはここを去ります。決心したんだ” (キク)
“ご迷惑をおかけしてすみませんでした。行こうよ、キクちゃん” (ハシ)
“私は帰りません、そんなこと言わないでください。待ってますから。” (キク)
“それで十分です” (橋)
ハシはキクのもとを去り、キクは胸を押さえた。橋の死を望んでいないのだ。
そう思いながら、橋はその場を立ち去った。
「キク…」(橋)
“どうしたんだ?” (キク)
“プレゼントがあるんだ。もうすぐ帰るから…」(橋)。
“そんなこと言わないでよ” (キク)
橋さんがそう言うと、そのとおりに驚いて振り向いた。
部屋の中には、2つのプレゼントがありました。
ひとつは袋。中には、花のようなものが入っていました。そして、その花の中には、日本で見られるような白い花が入っていた。
「この花は…」(菊さん)
キクは、こんな花は見たことがありませんでした。
もうひとつは、小さな箱でした。その中には紙が入っていて、ペンで折った紙が入っていました。
“ちょっと出かけてきます。留守の間、待っていてほしいんだ。” (ハシ)
“待ってるよ” (キク)
キクはそう言って、帰ろうとした。
帰ろうとしたとき、彼女は立ち止まった