始まってから最初の二分半は、健介が優勢に試合を進めているかのよう…

始まってから最初の二分半は、健介が優勢に試合を進めているかのように見えた。牽制のローキックが面白いように入り、相手のパンチはかすりもしない。相手の結城選手はボクシングの元東洋チャンプとはいえ、健介の間合いのコントロールは相手をはるかに上回っているように見えた。しかし健介が相手をコーナーに詰めたとき、違和感を感じた。スイッチしている。先ほどからオーソドックスの構えだったのが、サウスポーに変わっている。健介は試合前には十分な準備をして臨むタイプである。対戦相手の動画は可能な限り全部観るのは当然として、関係者のツテで相手がどこでどんな練習をしているかなど、情報収集は怠らない。健介が観た動画の限りでは相手がスイッチしたことは今まで一度もなかった。単に前足が効いただけか?と健介が思った次の瞬間、自分の右側頭部に強烈な衝撃を感じた。

健介は何が起こっているのかわからなかった。彼はずっとサウスポーとして戦ってきた。子供の頃から心のスタンスで戦ってきた。しかし、今までのような戦い方ができなくなっているような気がした。それどころか、サウスポーの構えから、サウスポーのように見える構えに変わっていた。彼は、心臓が止まったようにドキドキしているのを感じた。彼はレフェリーのプレッシャーを感じていた。彼の目は回っていた。対戦相手の結城は、自分がカラテカだった頃と同じ姿勢をとっていた。左足の位置は同じではなく、両手を腰に移動させていた。左足の高さは右足ほどではなく、結城は意識せずにサウスポーの構えをとっていた

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