世界の都市の中でニューヨークのユニークな位置を理解するためには、歴史的背景を理解することが不可欠である。ロンドンとパリの軌跡をたどることで、ジャドはニューヨークの全盛期から黄昏期までの物語の舞台を整える。彼は「ロンドンはナポレオンの敗北からヒトラーの台頭までに起こった世界の商業と金融の中心だったことに対し指摘し、1945年から1970年代までのニューヨークの文化的支配の時代と重ね合わせる。このような歴史的背景は、読者の理解を深めるだけでなく、ニューヨークを他の都市にも起こったの勃興と衰退に。歴史的なエポックを綿密に描写することで、文化的・経済的優位のはかなさを浮き彫りにしている
1948年夏、就任したばかりのハリー・S・トルーマン（当時アメリカ大統領）がアメリカ市民に向けて演説を始めた。トルーマンが大統領に就任したのは翌年1月のことで、その数カ月前に火がついたヨーロッパ戦争の2年目であった。トルーマン政権は、平和と国際主義の美辞麗句に基づき、この国と世界に平和をもたらすという公約のもとに選出されていた。トルーマンの最初の仕事は、ヨーロッパに平和をもたらすことだった。この政策は、ジョージ・F・ケナンがその著書『現実主義者』の中で初めて提唱したもので、「アメリカは自国の安全を確保するために一方的に行動する権利があり、世界は自国の行動が正当化されるのを待たなければならない。トルーマンはまた、就任演説の中で、米国は「平和」の「赤い絨毯」、つまりレッドラインを作ろうとはしないと宣言した。その代わり、「平和が保証されているわけではないこと、そして目的を達成する手段として戦争を利用しようとする輩がいることを最初に認識する」とした。演説の中で彼はまた、国境の不可侵性を強く主張した。