彼は久しぶりに故郷へ帰ってきた。海岸の小さな駅に降りた彼は怪訝そうに当たりを見渡していた。昔は無邪気になって遊んでた街も今はなにもない。家も山の一部を削り落とされたように高台を作って造成されていた。道も硬く舗装されていた。数年間はあらゆるものが流され、消えた震災の爪痕もほとんど消されている。彼の住んでいた家に差し掛かると彼の数十年の記憶が遥か彼方に消えていき彼の未来があの悪夢に入り込んだようだった。あの悪夢は家族と1人の大切な幼馴染みを子供の時に失ったことだ。
「さあ、やるぞ」。 それがゲームの名前だった。愛する人が死んだ瞬間、復讐の時が来たのだ。 「君を僕の花嫁にする!」。 子供の頃、愛の意味を知らなかった少年が口にしたその言葉は、彼の気持ちを高ぶらせた。彼は両親に復讐し、兄に復讐する。彼が最初の復讐者になるのだ! 「ああ、君を花嫁に迎えられて気分がいい!」。 「やったー!」。 「いや、私が花嫁になるわけじゃない。あなたが花嫁になるのよ」。 「私はあなたの妻になります!」。 「いいえ、私が結婚するわけではありません。あなたがお嫁さんならいいんです」。 「結婚しないの? ふと、30代半ばの少年の言葉に胸が高鳴った。慌てた顔で、持っていた剣を下ろして叫んだ。 「ここにいたいのか!」。 「ここにいるよ!」。 傍らで少年を見ていた20代くらいの男が、手を広げて説得していた。 「どうしたんですか? 「何を言っているんだ!」。 二人の友人にそう言われた少年は、首を振りながら笑い出した。 「早く結婚しないと、ここでお別れだよ?僕と幸せに暮らさない? 「…なんだと? 「わからないのか? 「あなたと幸せに暮らしたい」