彼は久しぶりに故郷へ帰ってきた。

彼は久しぶりに故郷へ帰ってきた。海岸の小さな駅に降りた彼は怪訝そうに当たりを見渡していた。昔は無邪気になって遊んでた街も今はなにもない。家も山の一部を削り落とされたように高台を作って造成されていた。道も硬く舗装されていた。数年間はあらゆるものが流され、消えた震災の爪痕もほとんど消されている。彼の住んでいた家に差し掛かると彼の数十年の記憶が遥か彼方に消えていき彼の未来があの悪夢に入り込んだようだった。あの悪夢は家族と1人の大切な幼馴染みを子供の時に失ったことだ。

彼は家の中に入った。家の中には誰もおらず、隅に椅子がひとつ置いてあった。見ているのは少し辛かったが、彼は惨めな場所から出なければならなかった。彼はすべてを失った。彼は孤独で、どこにも行くところがなかった。ある理性の声が言った。彼には生きる場所を見つけ、新たなスタートを切るチャンスがあった。彼ならそれができる 彼は椅子まで歩き、座った。目を閉じ、ため息をついた。これまでで最悪のことではなかったが、最良のことでもなかった。ここに未来はなかったが、立ち上がって前に進むことはできた。この惨めな状況を最大限に利用しなければならなかった。この場所から抜け出して、より良い場所に行くためにできることをしなければならなかった。 小さな事故で死にかけた日のことを思い出した。大型トラックと交通事故に遭い、トラックに轢かれそうになったのだ。救急車によって命は救われたが、彼の怪我はあまりに重かった。彼は昏睡状態に陥り、長い間昏睡状態のままだっただろう。目が覚めたときには集中治療室に入っていた。医師たちは彼の回復は不可能だと考えた。彼の命は失われた。 家族が面会に来たとき、彼はまだ生命維持装置につながれていた。家族はたびたび面会に来ていたが、彼は数年間、面会を求めていなかった。生きていても、彼はとても孤独だった。母親は彼の沈黙に焦りを感じていた

Photo by Jeffh Photography

この作品の出来はいかがでしたでしょうか。ご判定を投票いただくと幸いです。
 
- 投票結果 -
よい
わるい
お気軽にコメント残して頂ければ、うれしいです。