こんな夢を見た。 腕組をして枕元に坐すわっていると、仰向あおむきに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭りんかくの柔やわらかな瓜実うりざね顔がおをその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇くちびるの色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然はっきり云った。自分も確たしかにこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗のぞき込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開あけた。大きな潤うるおいのある眼で、長い睫まつげに包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸ひとみの奥に、自分の姿が鮮あざやかに浮かんでいる。
死ぬの?どうして? ドラゴンが人類を食べる目的でこの世界にやってきたことを知ったからだ』。 私はその情報をどう受け取ればいいのかわからなかった。いったい何が起こっているのだろう?このドラゴンと、この世界にやってきたドラゴンは、とてもとても危険だと断言できる」。 どうして? 人類は肉体的にとても弱い。体力もそれほど強くない。ドラゴンに食べさせるような強力な魔法も持っていない。だからドラゴンがこの世界にやってきたのだ。人類が滅びれば、ドラゴンが世界を征服する』。 私は何を考えているのかわからなかった。 どうなってるの?私は死ななければならないのですか』私は尋ねた。 場合によるよ。ドラゴンがこの世界を征服するためには、君は死ななければならない」。 私が死ねばドラゴンが乗っ取るとでも? いや、ドラゴンに乗っ取られない可能性もある。あなたは世界の歴史を知っている 世界の仕組みは知っていますが、なぜこんなことが起きているのか見当がつきません。自分が存在しなかったかのようだ』。 ‘そうでしょう。 でも生きているのは私だけだ』。 その通り。この黙示録で生き残ったのは私だけ。私はまだここにいる ドラゴンに乗っ取られないかもしれない唯一の理由は、君のおかげだ