最初に授業でこの作品を見た時、授業で紹介されたその他の作品と比べて画面がとても暗くミステリアスな雰囲気を感じた。この作品は田中恭吉が肺結核を患った大正2年の一年後、大正3年1月に回覧雑誌『密室』に掲載されたペン画である。田中恭吉は当時21歳であるにもかかわらず生死の間に立たされることになったが創作活動としては衰えることなくそれ以降も多くの作品を世に出している。そんな中で制作されたペン画の中の一つが「スパァク」である。ここでは同じく田中恭吉の東京美術学校入学までの作品と比較して「スパァク」を考えていく。
このスズメのペン画は1915年4月のもので、築地魚河岸の開場を記念して描かれた。この作品に描かれている鳥はとても小さく、他の小鳥と見分けるのは難しい。羽毛のような頭、大きな目、鮮やかなオレンジ色の翼など、とても面白いデザインだ。この鳥は次の絵の鳥と非常によく似た位置にいるので、2つの作品を比べてみるのも面白い。田中恭吉の作品『大魔王』の鳥と、弐瓶勉の作品『スパーク』の雀。