こんなもの、傷の舐め合いだ。

こんなもの、傷の舐め合いだ。お互いにわかっていた。それでも、お互い淋しさともいえない空虚を埋めずにはいられなかった。それが傷に爪を立てると分かっていても。たった一本のマッチに縋り付くように。寒くて寒くて凍えてしまいそうなとき、ひとが、あたたかさを求めるように。たった一時、その場しのぎだとしても。手を伸ばさずにはいられなかった。する、する、と。作務衣の隙間から入り込んできた棪堂の指が筋肉の筋をなぞり上げるように動く。少しかさついた指が、冷えた指先が、肌の上を滑るのを感じて反射で体が小さく震えると、その反応を見て

私は手を引いて彼の目を見た。彼は何も反応しなかった。感情もない。それでも彼は息をしていた。鼓動を感じた。彼の表情の隅々にまでゆっくりと忍び寄る小さな希望の光が見えた。残酷なまでにむき出しになった歯が見えた。私はとても寒かった。とても寒かった。でも気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようとした。私はとても寒かった。でも気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようとした。私はとても寒かった。でも気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようとした。 私はとても寒かった。でも気にしなかった。でも私は気にしなかった。 そして、学校に戻った。自分がどこにいるのか、どうやってそこにたどり着いたのか、まるで見当がつかなかった。私は奇妙な孤独感を感じた。他人とこれほど切り離された感覚を味わったことはなかった。とても冷たく感じた。でも、気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようとした。私はとても冷たかった。でも気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようと振り向いた。 私はとても寒かった。でも気にしなかった。私は手を放し、次に助けたい人を見つけようとした。 私はとても寒かった。でも気にしなかった。でも、私は気にしなかった。

Photo by Alberta Newsroom

この作品の出来はいかがでしたでしょうか。ご判定を投票いただくと幸いです。
 
- 投票結果 -
よい
わるい
お気軽にコメント残して頂ければ、うれしいです。