たしかに、気候変動対策には初期費用がかかります。しかし、それを先送りすることで将来的に発生する経済的損失のほうが、はるかに深刻です。たとえば、干ばつや洪水などの異常気象はすでに農業に大きな打撃を与えており、食料価格の上昇や供給の不安定化につながっています。世界気象機関(WMO, 2021)の報告によれば、2020年だけでも気象関連の災害による経済的損失は数千億ドル規模にのぼりました。さらに、欧州環境機関(EEA, 2023)は、気候変動による熱波や水不足、洪水が健康被害やインフラの損壊、産業活動の停滞を引き起こしていると警告しています。世界経済フォーラム(WEF, 2023)も、気候変動を「今後10年でもっとも深刻な経済リスク」と位置づけています。こうした現状を見れば、気候変動を放置することは、環境だけでなく経済や社会にとっても大きなリスクであることは明らかです。だからこそ、気候対策は「環境を守るため」だけでなく、「経済を守るための必要な投資」として、今こそ真剣に取り組むべきなのです。
産業革命の終焉とそれに伴う化石燃料のシェア低下によって生じる気候の混乱を考慮すると、気候変動に関連する総コストは数兆ドルに上るだろう」。 この 「新しい 」炭素税は、カナダのオンタリオ州でのみ導入されており、年間10億ドルの税収が見込まれている。カナダ政府は、この税収を個人所得税の減税に充てるが、国内最大の法人税は減税しないと発表している。カナダ政府は、国連を含む環境保護団体やその同盟国から、炭素税は 「雇用破壊税 」であるとして抗議の対象となっている。炭素税はカナダ国民の怒りを買い、その実施に抗議し、暴動まで起きている。抗議行動は、列車の脱線や高速道路の封鎖など大きな混乱を引き起こしている。炭素税が最初に導入されたオンタリオ州では、10万人以上が反資本主義集会に参加し、ブリティッシュ・コロンビア州では、数千人が新税を非難するために通りを埋め尽くした。 地球温暖化の危機もまた、人々の関心を広く集めている。AP通信の最近の世論調査によると、アメリカ人の大多数が気候危機の状況は深刻だと考えており、3分の2以上が海の上昇を懸念している。