銀木犀の花は甘い香りで、白く小さな星の形をしている。そして雪が降るように音もなく落ちてくる。去年の秋、夏美と二人で木の真下に立ち、花が散るのを長いこと見上げていた。気がつくと、白い星形でいっぱいになっていた。これじゃふめない、これじゃもう動けない、と夏美は幹に体を寄せ、二人で木に閉じ込められた、そう言って笑った。 ーガタン!びっくりした。去年のことをぼんやり思い出していたら、机にいきなり戸部君がぶつかってきた。戸部君は振り返ると、後ろの男子に向かってどなった。「やめろと。押すなよなあ。おれがわざとぶつかったみたいだろ。」自習時間が終わり、昼休みに入った教室はがやがやしていた。私は戸部君をにらんだ。「なんか用?」「宿題を聞こうと思ってきたんだよ。そしたらあいつらがいきなり押してきて。」戸部君はサッカー部のだれかといつもふざけてじゃれ合っている。そしてちょっとしたこづき合いが高じてすぐに本気のけんかになる。わけがわからない。塾のプリントを、戸部君は私の前に差し出した。「この問題わかんねえんだよ。『あたかも』という言葉を使って文章を作りなさい、だって。お前得意だろ、こういうの。」
そしてまた 「邪魔だ!」と言う。私はまだ彼の物腰に慣れない。彼は私とは少し違う。と怒鳴るのが聞こえた。「授業に遅れるから、書いてくれ」 「戸部君、何してるの?」 いつも卜部君をからかっていた大男が尋ねた。卜部君は振り返って言った。”てへっ、何するんだ?」 あの子たち、本当に僕を追い回していたんだ。卜部くんは本当に怒って、その子たちに怒り始めて、それで君にぶつかったんだ。バーンって!何かをぶつけたような音がした。戸部君と大男が怒鳴り合っていた。「迷惑かけるなよ、どうせまだ寝てるんだから」と戸部君が怒鳴った。すると大男は卜部くんのお腹を蹴って突き飛ばした。卜部君は倒れた。「何をするんだ〜」と卜部さんが怒った。「お前が蹴ったんだ。「どうせまだ寝ているんだから、気にするなよ」と戸部君が言った。彼は私を見て、私も怒り出すのではないかと思った。彼は大男と他の生徒を見た。そして私の目の前を見た。私をじっと見ているのがわかったので、彼の目をちらっと見た。卜部さんの目は以前と違っていた。青かった。間違いなかった。そして戸部くんの視線は私に向けられていた。そう確信していたので、私はまったく恥ずかしくなかった。「どうしたの?私は気になった