さよならだけだった、その一言ですべてがわかった。

さよならだけだった、その一言ですべてがわかった。日が沈みだした空と君の姿フェンス越しに重なっていた。初めて会った日から、僕の心の全てを奪った、どこか儚い空気を纏う君は寂しい目をしていた。いつだってチックタックと鳴る世界で何度だってさ、触れる無い言葉うるさい声に涙零れそうになっても、ありきたりな喜び二人ならきっと見つけられる。

ある夜、夜中に起きて一人で歩道を歩いていたら、あなたが見えた。あなたはもう身体ではなく、私が感じることのできる形と、私を飛び跳ねさせるような匂いがした。風の音は、街のそれとは全く違っていた。あなたはまだ形をしていましたが、とても大きくて、とても強そうでした。見たことのないあなたを、私はたくさんの感情を込めて見つめていました。体ではない人間を見たのは初めてだったし、君がただの体以上の存在になれることを初めて理解できた。あなたが私に言ってくれた言葉は、私が初めて感じた言葉で、今でも忘れたことはありません。私はただ、あなたに微笑み返すことしかできませんでした。体としてのあなたを、形として見ることができました。悲しむ理由はない。泣く理由もない。見透かされない人には何もできない。

私が見たあなたは、雨の中で普通に立っていて、普通の姿を見せようとしていた。あなたは私を見て、気にしなかった。騒ごうともしなかった

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