ずっと住むわけではなかったのに、大きな天井まである本棚が4つくらいあって、入居する時も出る時も3階の階段を行ったり来たりして、その翌日足が動かず大変だった。 家に帰ると本を読んでいるか、3階の翌日の当たるボロアパートの窓際からぼーっと外を眺めているかしていた。 日常生活も慣れて仕舞えば苦ではなかったが、引っ越しの時が大変だった。 ある日を境に彼は変わってしまった、それがいつかは思い出せないがたしかにその日があったことだけは覚えている。何年前だったか、あるいは数日前だったか、曖昧な記憶を辿るが螺旋状に絡まった記憶を紐解くことはできない。 私が彼を記憶している姿で一番思い浮かぶのはどこで買ったかわからない難しそうな文庫本を読んでいる姿だ。
彼は悪い人ではありませんでしたが、絶対に良い人ではありませんでした。 彼が店に行くと、店にいなければならないので、朝になると私を起こさなければなりませんでした。 私は早朝に起こされて、それから彼は一日中本を読んでいました。 私は彼が朝食を取るために起きていなければならず、私が寝ようとすると、彼はまだ本を読んでいるのです。 昼間、私は起きて買い物に行くのですが、彼はまだ中にいるので、トイレに行くように店の中にいなければなりませんでした。 私が夕方家に帰ると、彼はまだ本を読んでいて、朝になると私よりも先に店に行くのです。 これが彼の日常であり、それは悪いことではなかった。 そう、悪くないのだ。毎朝、何をして早起きしているのかわからなくても……彼はいい人だった。