どうやらこの世界は、私を殺したいらしい。

どうやらこの世界は、私を殺したいらしい。随分と自虐的で自惚れた独白を頭に浮かべ、私は葡萄味の炭酸飲料を口に含んだ。嗚呼、こんな蝉の煩い夏は、この炭酸の如く刺激的な事でも起きてくれないモノか。などと考えていると、私の傍らを小さな男の子と女の子が通り過ぎた。男の子は小学校低学年か幼稚園児か、女の子はその妹だろうか。可愛らしい小さな兄妹だった。ふと、私は彼らがとても眩しく見えた。まるで、夏の日差しが反射する川のように。「ねぇ、お兄ちゃん」女の子が兄に話しかける。「なんだ?」兄が応える。「あのお姉ちゃんの髪の毛、綺麗だね!」妹が私を指差して言う。「ああ、そうだな」…綺麗、ねぇ…こんな黒髪、この日本じゃ別に珍しくも無いだろうに。まぁ、トリートメントは毎日しているが。それでも美しい黒髪というよりかは黒くて長いワカメみたいな髪だ。…多分あの子は、まだこの世の穢れを知らないのだろう。出来ることならそのままでいて欲しいが、哀しいかな、このクソッタレで狂った世界はソレを許してはくれない。世界はいつだって残酷だ。まさにクソゲー。何となく目を合わせるのは気恥ずかしい気がして、あえて空を仰ぐ。蒼い夏空が目に染みる。涙が零れたのは、きっとそのせいだ。泣いているところを見られては厄介だと、手のひらをかざすフリをして、涙を拭ってからふらふらと公園のブランコから立ち去った。「…ねぇお兄ちゃん、なんであのお姉ちゃん泣いてたのかな?」「さぁ…?」…やはり、子供は好きになれない。私はまた一口、炭酸を含んだ。…私の名前は「草薙桜」。未だに将来の夢が決まっていない女子高生だ。いや、昔はあったんだ。漫画家とか、小説家とか…でも、周りの才能に打ちひしがれて夢を手放した。それだけだ。

私たちの右と左で繰り広げられている。なぜ世界はこんなにも残酷なのか。誰かの手によって死にたいのではなく、世界の手によって死にたいのだ。でも、残酷なのは世界ではなく、私なのだ。それは私が毎日闘わなければならないことなんだ。だから私は友達が好きなんだ。だから同じ女の子と人生を過ごすのが好きなんだ。森で出会った彼女とね。でも、彼女は亡くなって、僕は大人になった。いつか後悔する日が来るのかな。私には何の力もない思いだ。僕は死なない。ただ彼女と一緒にいたい。友達と一緒なら、それができる。でも、ずっと一緒にいることはできない。彼女は一人で生きていくつもりはない。僕にもそれはできない。それは私が決断しなければならないことで、私が受け入れなければならないことなんだ。結局、彼女と一緒にいることはできないんだ。それが僕にとって正しいことではないとわかっているから。私たちは別れるべきで、ある程度の時間が経ったら、どちらかが別の世界に行くべきなのかもしれない。もちろん、具体的な時間は決められない。あと100年かもしれないし、1000年かもしれない。でも、その決断が必要なんだ…。その決断が必要なんだ。私たちが一緒にいるなら、私は幸せだ。別れたら、失敗したと思う。私は失敗した。私はまだ子供で、まだ物事を把握し始めたばかり。私はまだ子供… でももう違う。彼女と一緒にいたい。生きたい。彼女と暮らしたい。思い出を持ちたい。

Photo by mococouncilmd

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