以前友人から聞いた話だ。

以前友人から聞いた話だ。仮にタカオとする、その友人は、テレビで傷害事件の類が報道されるたびに画面を凝視し、容疑者などの名前を確認する奇癖があった。僕とお酒を飲みに行っても、呑み屋のテレビから流れるニュースを気にするので、「何か、逮捕されるような恐れのある友達でもいるのかい」と酒の席でからかったら、「信じなくても別にいいんだけどね」と言い置いて、小学生6年生の時の体験を話してくれた。長文になるし、前置きも長い。あまり怖くも無いかもしれない。平にご容赦。qタカオが田舎の小学生の頃、巷ではCDがカセット・テープに取って代わりつつあった。しかし大して裕福でなく、流行にも疎かった小6のタカオは、父親から譲ってもらった古い型のカセット用ヘッドフォン・ステレオで十二分に満足していた。右肩から背中を通って左腰へ繋がるタイプの、ポシェットのようなリュックにそれを仕込んで外へ遊びに行くのが常だった。当時ちょうど自転車を買ってもらい、音楽を聴きながら漕ぎまわすのが好きだったらしい。ただしこれは危険だからと後にこっぴどく起こられてからは控えていたが。ある日、タカオの同級生のヨウスケが、自分も自転車を買ってもらったことをタカオに告げた。「タカオ、お前も自転車持ってんだろ?二人でどこか遠出しようぜ」タカオのほうも大賛成で、例のリュックを背負って、日曜日の昼に二人で自転車を漕ぎ出した。「ヨウスケ、どこまで行く?」「今まで行ったことの無い道がいいな!」二人は普段めったに行かない田舎道を選び、一心不乱にペダルを漕いだ。どこをどう走ったのかは解らないまま、夕方に差し掛かる頃、ついに二人は峠に入り、山道へと入りこんでしまった。

生後数ヶ月。小さな体が最初の一歩を踏み出した瞬間、ベースギターのベースラインが響き渡った。高尾は片足立ちでそれを聴いていた。少し意識が朦朧としていて、言われたとおりにするしかなかった。しばらく立ちすくみ、重力の振動を感じながら、ゆっくりと後ずさりを始めた。音が耳に響いた。映画の世界の音のようだった。さらに数歩歩くと、彼は走り出した。もともと走るつもりはなかった。音の発生源を探そうとしたが、小さな丘に出くわしたとき、彼は途方に暮れた。山のように見えたが、そうではなかった。ただの小高い丘だった。どちらに行けばいいのかわからなかった。高尾はしばらく考えてから走った。どっちが上なのかわからなかった。ようやく山の頂上が見えた。大きな崖に出くわした。崖を登る道はなかった。音は下から聞こえてきた。崖に穴が開いているのを見つけ、飛び降りることにした。飛び降りようとしたとき、音が聞こえた。物体が落ちてくる音だ。最初は怖かったが、声を思い出した。外の世界からの声だった。高尾は地面に留まらなければならないと思った。どうやって降りようかと考えていると、ようやく山の麓が見えた

Photo by HBarrison

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