八月も終わりに近づいた赤口の昼、私は寂れた葬儀場を見上げてため息…

八月も終わりに近づいた赤口の昼、私は寂れた葬儀場を見上げてため息をついた。昨日亡くなった顔も思い出せない遠縁の親戚の葬儀に出席するためだっだ。両親がただならぬ様子で行くようにと言うものだから、不気味に思いながらも出かけてきたのだ。葬儀は聞いたこともない小さな葬儀屋の、顔を顰めるほど古い会館で行われる。立ち尽くしている場合ではない。仕方なしに入り口の扉を押すと、錆びた蝶番が耳障りな嫌な音をたてた。薄暗い玄関ホールにはうっすらと黴臭い匂いが漂っていた。二度目のため息を着くと、後ろから声をかけられた。

「タカシ」聞いたことのない声だった。振り返ると、部屋の真ん中に男が立っていた。流れるようなブルーのドレスシャツに白い襟、白いズボンをはいていた。緑色のネクタイを締め、髪は真ん中で分けていた。身長は私の身長と同じくらいで、180センチほどだった。彼は悲しそうだった。 「光一」と私が言うと、彼はうなずいた。「大学を辞めた理由はよくわかるよ。大きな失望だった。でも、なぜ戻ってきたのかは理解できない」。 彼は濃い紫のスーツを着て、濃い紫のネクタイをしていた。彼の目は私と同じ青で、少しエッジがあり、黒いブリーフケースを持っていた。彼は疲れているように見えた。 「私は言った。「同級生の女の子にすべてを打ち明けられた。受け入れられなくて、戻ってきたんだ」。 「戻る必要はなかったよ。「他のことをすべきだった。 「戻る必要はなかった」と私は言った。私はため息をついた。「どうせ死ぬんだから、格好良く逝きたいよね」。 光一はうなずいた。「そうだね 「本当に大丈夫なの? 「大丈夫だよ 「なぜ戻らなかったと思う? 「わからない。他に聞きたいことがある」 「何?」 「後で話す 「わかった。助けてくれてありがとう。 「礼には及ばない。「君なしではできなかった。ごめんなさい.」 私はうなずいた。

Photo by jpverkamp

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