二月ばかり前の事であるが、N某ぼうという中年の失業者が、手紙と電…

二月ばかり前の事であるが、N某ぼうという中年の失業者が、手紙と電話と来訪との、執念深い攻撃の結果、とうとう私の書斎に上り込んで、二冊の部厚な記録を、私に売りつけてしまった。人嫌いな私が、未知の、しかも余り風体ふうていのよくない、こういう訪問者に会う気になったのはよくよくのことである。彼の用件は無論むろん、その記録を金に換えることの外ほかにはなかった。彼はその犯罪記録が私の小説の材料として多額の金銭価値を持つものだと主張し、前持まえもって分前わけまえに預り度たいというのであった。
 結局私は、そんなに苦痛でない程度の金額で、その記録を殆ほとんど内容も調べず買取った。小説の材料に使えるなどとは無論思わなかったが、ただこの気兼きがねな訪問者から、少しでも早くのがれたかったからである。

私がその人から初めて買った本は、二つの家族の間に挟まれた無垢な少女の話だった。驚いたことに、その男自身も同じような状況に陥ったことがあり、それを乗り越えた唯一の人間であることがわかった。
私は次の本を買った。強盗団と争った男の話で、彼の最後のセリフが自分の額に書かれていた。”I had to die.”
次の本を読み始めた。主人公の警察官が警察学校に潜入して事件を解決するスリラーだ。
たくさんの本を読むプレッシャーからか、頭が痛くなってきたのはそれからだいぶ経ってからです。疲れて何度も休んでいるうちに、数日でそれぞれの本をほぼ読み終えてしまいました。
の感が大きかった。

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