長崎原爆資料館を訪れて。そこには人がいた証がありました。溶けて1つの塊となった瓶、沸騰して泡立った瓦、頭蓋骨の一部がくっついたヘルメット、それらを使っていた人は皆亡くなったのでしょう。しかしそこには確かに、誰かが、私たちと同じように生活していた証があったのです。考えてみてください。
K:ほんの数時間、数日という問題ではありません。数十年単位の問題なんです。
S:それ以上でしょうね。
K:ええ、経験から言うとね。私は人生で長崎を訪れたことがあるんです。
S:その後、原爆をご覧になったんですか?
K:見ましたよ。戦時中も見たよ。怖くはなかったけど、見ましたよ。
S: 何を見たんですか?
K:空に向かって煙が上がっていくのを見た。太陽はまだ出ていたが、空にはまだ完全に出ていなかった。大地から煙が立ち上ってくるのが見えて、空が黒くなっているのが見えた。霧のようなもの。
S:そのとき、どんな気持ちでしたか?口をあけて立っている人がいましたが?
K:何も。恐怖も何も感じなかった。何も見えなかった。まったく何も。煙の匂いは強烈で、こんな匂いは嗅いだことがない。
S:お香のにおいみたいなものですか?
K:そうです、その通り。あまりに強烈で、他の匂いがわからないくらい。あまりの強さに、もう何も見えなくなってしまったんです。木々も見えなくなった。あの黒い煙以外、何も見えなかった。
S: その後、爆弾をご覧になったんですね。
K:戦争中も見たよ。怖くはなかったけど、見たよ。ショックでしたよ。悪夢かと思った。
S: 人を見ましたか?
K:いや、人は見なかった。煙が見えた。
S:私もそんなの見たことないですね。
K:私も見ました。すごく強かった。すごく強かった。あまりに強くて、長い間、息ができないような感じだった。木も見えなくなった。何も見えない、全く何も見えない。その時は何も思わなかったんですけどね。
S: そのとき、何を考えていたんですか?
K:あそこから出る方法があるはずだ、あそこで絶対に死ぬんだ、と思っていました。同じようなことを思ってました