雑踏の中、視線を感じて振り返れば、こちらを見ていたずらに笑うテヨ…

雑踏の中、視線を感じて振り返れば、こちらを見ていたずらに笑うテヨンがいた。待って、行かないで。その声がテヨンに届くことはないが、無我夢中に人混みの街をかき分け泳いでゆく。やっと追いついたと思ったその背中は、どうしておれが近づくと離れて行ってしまうのか。たどり着く前に、テヨンは行ってしまった。

電話が鳴ったとき、私はまだテヨンと彼女の失踪について考えていた。私はそれを無視し、会話に集中した。そして電話に出る。 「もしもし? “あの、私の名前はヨンミです。友達です。 「ごめんなさい。今、本当に恥ずかしいんだけど、心配で心配で……」。 “心配するようなことじゃないんだけど、まさかこんな電話がかかってくるとは思わなくて” “本当にうれしいよ” 「隣のビルのホテルの部屋に行ってほしい。ここからちょっと遠いけど、歩けないかもしれない。歩けなくても大丈夫だと言ってください」。 “わかりました。ありがとう」。 “またね” “またね” 私は電話を切る。まだ夜は浅いので、私の心臓はまだ高鳴っている。ボーイフレンドの声を聞くなんてそうそうあることではないが、この電話は予想外だった。話をしながら、私は友人のことが頭から離れない。以前、テヨンは夜中の2時に電話をかけてきて、私の無事を知らせてくれた。今回は何て言えばいいのかわからない。ナイーブに聞こえるかもしれないけど、テヨンも恥ずかしがっているだろうと思う。彼女を元気づける方法を考えようとするんだけど、何も思いつかない。まったく思いつかない。 午前3時頃、彼女がアパートにいることがわかった。服装は仕事用ではない。Tシャツにジーンズだ。私は急いでいたが、彼女のアパートに着いた瞬間、彼女がドアに出ないことに気づいた。私はドアを押した。

Photo by jaime.silva

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